仮装隠蔽と偽り不正
法人税法と国税通則法の仮装隠蔽規定 隠蔽仮装に関しては、法人税では、役員給与の損金不算入、不正行為の費用の損金不算入、青色申告の承認申請の却下・取消し、の4条文に規定があり、 国税通則法では、重加算税の条文にのみ規定がありますが、刑事罰の規定にはなっていません。 仮装隠蔽の誤ちを犯したというだけでは、損金不算入・青色却下取消・重加算税の行政制裁を受けるだけです。 法人税法と国税通則法の偽り不正規定 偽り不正に関しては、法人税法では、罰則を定める2条文に規定があり、「10年以下の懲役若しくは1000万円以下の罰金」等の刑事罰の規定となっています。 国税通則法では、更正処分期間制限7年への延長、延滞税の計算除外期間排除、時効の2年延長、その他全部で5条文に規定がありますが、刑事罰の規定にはなっていません。行政制裁の規定です。 意見がバラバラ 個別税法の刑事犯に該当するものに限って国税通則法の偽り不正条規が適用されるべきなのか、個別税法の偽り不正の条規と無関係に国税通則法の偽り不正条規が適用されてよいのか、そもそも両法律の概念は同じなのか、さらに「偽り
共謀罪と会社・暴力団の節税
税理士会総会での質問と回答 税理士会の機関紙の記事によると、今年の定例総会で、次の質問がありました。 衆議院における参考人意見陳述では当事者に節税の意図しかなく、脱税が行われなかったとしても申告前に捜査当局により脱税のおそれがあるとされた場合には、当該法人税等の修正申告をした税理士が捜査対象となる旨の発言があったことから、税理士会として、どの様に考えているか教えていただきたい。また、会員に対する情報提供について教えていただきたい。 これに対する回答は、次のようなものでした。 質問のような正当な事業活動を行っている一般の事業会社は、毎年脱税を繰り返しているというだけでは組織的犯罪集団に当たることはない旨、第193回衆議院法務委員会において政府参考人からの答弁があった。さらに、日税連においても国税庁を通じて情報収集に努めており、いずれ会員に周知すると考えられる。 国会の政府参考人の答弁 ・・・・所得税の免脱等の実行を計画する例といたしましては、例えば暴力団がその組織の維持運営に必要な資金を得るために、組織的に所得を隠匿して脱税することを計画するといっ
赤信号無視と共謀罪既遂
赤信号無視で逮捕・訴追されることもある 歩行者の赤信号無視が警察官の目の前で行われても、せいぜい注意される程度で、逮捕・訴追されることなど滅多にありません。かつて、オウム事件勃発の頃にニュースになった逮捕事件があった程度です。 ただ、赤信号無視の個人を法的に責めるとしたら、行政処分ではなく、通常の犯罪として刑事訴訟法の手続きに則り、書類送検、起訴という手続きをとらなければならず、非常に厄介、国民平等待遇の問題もあり、現実としては大目に見て無視しているということなのでは、ないでしょうか。 でも、決して法律違反者であるという事実が無くなる訳ではありません。 共謀罪の構成要件・計画の準備行為 租税回避計画を前提に、共謀罪法の条文を読んでみると、「計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われ」が構成要件の内容で、「計画をした犯罪」とは「偽り不正の行為により税を免れること」です。税の抜け穴プランを思い付いて、話題にした程度の個別具体性がない段階ではまだ、計画にもならないと思われます。 過去の事例で言えば、自己株取得・みなし配当、チェック・ザ・ボックスによ
目標管理制度の改革
目標管理制度は、我が国企業の80%以上が活用しており、その内少なくとも50%が、何らかの問題点について改革する計画を持っております。 目標管理制度の問題点と改革課題 問題点の多くは、目標管理制度の目的の見直しにさかのぼるケースが多く、それらを①~④に大別し、それぞれの改革課題(ワク内)を要約すると次の通りです。 ①制度の活用目的が不鮮明 「経営戦略目標を達成するための業績管理制度」とする(組織と社員一人ひとりが与えられた役割・責任・成果責任、または期待貢献に応じて目標を分担し、活力をもって達成する制度とする)。 ②目標達成度評価の公正性・納得性が確保できない 目標達成度評価の主眼を「経営貢献度」に置き、公正性・納得性をもつ評価を実施し、等級・賃金等の処遇に反映する。 ③目標設定方法が不明確 社員の「経営戦略目標に基づく主体的・挑戦的目標設定」を行う方法を設定する。 ・経営計画・経営目標をカスケードダウン(段階的順次細分化)により、組織・チーム目標・個人目標へ的確に配分する。 ・役割・職務等級制度とリンクし、役割・成果責任・期待貢献に基づいて目標設
個別労働紛争件数から見る紛争と解決
平成28年度個別労働紛争件数は高止まり 今年も厚生労働省から「平成28年度個別労働紛争解決制度の施行状況」が6月に発表されましたが、総合労働相談件数は113万741件で前年に比べると9.3%増となりました。 件数が100万件を超えるのは9年連続であり、高止まりしています。労働相談制度を知る人が増え、相談者も黙っていないで職場に改善を求める動きも広がってきている事が背景にあるようです。 「いじめ・嫌がらせ」が問題のトップ 中でも大きな問題となっているのが「いじめ・嫌がらせ」です。民事上の個別労働紛争の相談件数(7万917件)、助言指導の申出(2206件)、あっせんの申請件数(1643件)のすべてでトップになりました。 「いじめ・嫌がらせ」は近年、毎年労働紛争のトップ理由であり問題視されています。これは「ハラスメント」と同じものと考えられます。例えば厚生労働省の「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」(今年4月公表)においても3人に1人が「パワーハラスメントを受けた経験がある」との結果が示されていて、企業での対策は必至となっています。 労使紛争防
平成29年度地域別最低賃金
最低賃金引き上げ額平均25円で過去最大 平成29年地域別最低賃金改定額は中央最低賃金審議会で賃上げ額の目安が公表され、各都道府県労働局長の決定により10月1日より順次発令されます。 改定額を見ていくとAランクの6都道府県は目安通り26円引き上げられ、東京、神奈川に続き大阪も900円を超えました。Bランクの11府県も目安通り25円引き上げられ、三重、広島、滋賀、栃木の4県が新たに800円以上。一方Cランクは新潟が目安より1円高い25円の引き上げ。他の13道県は目安通り24円の引き上げで、北海道と岐阜が新たに800円台に乗せました。Dランクでは鳥取、宮崎、沖縄が目安より1円高い23円の引き上げで、高知、沖縄と福岡を除く九州6県が737円で並びました。 平成35年度には1000円まで引き上げ? 最低賃金は近年引き上げの流れが続いていて、時給額のみで表示されるようになった平成14年度には全国加重平均額は663円でしたが、昨年度に初めて800円を超えました。政府は全国加重平均で最低賃金3%程度引き上げ1000円を目指しており、このままですと平成35年度には
イクメン育児休業・同給付金 (男性版マタニティーリーブ関係)
パタニティーリーブ(男性版育児休業)取得 制度(育児休業法・育児休業給付制度)や言葉(イクメン)があっても、なかなかそれを活用できない雰囲気にあるのが、日本の民間企業であり、そこに働く人たちです。 一方、同じ日本にありながら、外資系企業では、企業側もそこで働く人も、日本の民間企業とは考えが違います。日本人男性従業員は、奥さんの出産を機に、パタニティーリーブ(男性版マタニティーリーブ)を取得することになりました。 男性版:育児休業制度と育児休業給付金 (1)どれくらい休めるのか? 子の出生日から1歳に達する日(誕生日の前日)までの間で労働者申出の期間です。 (2)その間の給料は? 育児休暇中の給料は、就業規則によりますが、定めがなければ、無給で構いません。 (3)何か給付金はもらえる? 出産日以後に無給の場合、育児休業給付の申請により、雇用保険から、給料の育休開始から180日目までは「休業開始時賃金日額×支給日数×67%(181日目以降は同50%)、育児休業給付金が支給されます。 ただし、給付には上限があります。 また、育児休業給付金は、課税の対象
アニメ・ファッション分野等での 外国人採用
専門知識・技術が求められる外国人採用 外国人が日本で適法に就労するためには、就労可能な「在留資格」、いわゆる「就労ビザ」を取得する必要がありますが、一部の例外を除き、この就労ビザが許容され得る業務は「学術上の素養を背景とする」「高度」で「専門的」な技術・知識を要するものでなければならないとされています。たとえば、会計学を学んだ人がその知識を活かして会計業務に就く場合や、電気通信工学を学んだ人がエンジニアになる場合などは比較的イメージしやすいのですが、業界によってはどのような業務が「学術上の素養を背景とする」「高度」で「専門的」なものとして許容されるのか、判断が非常に難しいケースが多々ありました。 クールジャパン戦略と就労ビザの明確化 これに対し、法務省は平成29年9月、アニメ、ファッション・デザイン、美容、食の4分野について、これらを専門に学びに来日した留学生等が、卒業後も引き続き日本で働く場合、どのような業務が就労ビザの活動範囲に該当し得るのか、各分野におけるこれまでの許可事例等を公表しました。この背景には、クールジャパン戦略の推進や日本のコン
会社分割の要件緩和 創業者の会社貸付金の相続対策
会社分割を利用して貸付金の整理 平成29年の税制改正で分割型分割の適格要件が一部緩和されました。その内容はこうです。 単独新設分割型分割にあっては、分割後の株式の保有関係は、分割後にその同一の者と分割承継法人との間にその同一の者による完全支配関係(支配関係含む)が継続することで足り、分割後のその同一の者と分割法人との間の完全支配関係の継続が不要とされました。 そこで、改正後の単独新設分割型分割を利用して創業者の会社貸付金の整理を試みてみます。 同族会社と同一の者 この「同一の者」は、親族が単位となりますので、同族会社の場合、親族で株式を保有している例が殆どだと思われますので、いわゆる、会社と同一の者による完全支配関係が成立します。適格要件は満たします。 例えば、甲社は、創業者60%、配偶者10%、子30%の割合で株式を保有されていたとします。この場合、甲社は、「同一の者」による完全支配の関係にあります。 創業者の貸付金の整理 具体的な手続きはここからです。甲社は、創業者からの借入金6千万円があり、債務超過でその返済も不能の状態にありますが、現在、
ふるさと納税実質2千円負担をゼロにする方法(裏技)
実質負担2千円のふるさと納税 ふるさと納税は、「実質2千円負担で地方の特産品が返礼品としてもらえる」と宣伝されています。実質負担2千円は、所得税法や住民税法で「寄附金が2千円を超える場合には…」等と規定されているためです。 2千円を減らす方法はないでしょうか? ふるさと納税利用者拡大の歴史 平成20年に導入されたふるさと納税制度の利用者は、当初年間3万人程度でしたが、平成23年の東日本大震災で被害を受けた自治体への支援の寄附が増えてこの年74万人強の寄附がありました。その後はいったん減少しましたが、税収の少ない自治体にとっては魅力的な収入源ということもあり、返礼品競争や手続きの簡素化により、利用者は拡大しました。平成28年度の個人住民税における適用者数は129.5万人であり、前年度の43.5万人の約3.0倍でした。 こうした過程で、各自治体は、「書面申請→電子申請」、「銀行振込もしくは郵貯振替→クレジットカード決済」など、利用しやすい環境を整えてきました。 クレジットカードによるふるさと納税決済 クレジットカード決済は、納税者にとっては銀行等に出